Andrea Zanrè

Andrea Zanrè

 

アンドレア・ザンレはクラシック音楽への情熱と楽器、特に弦楽器の響きに駆り立てられて、18歳で弦楽器製作者への道を歩み出します。

彼は1994年から1998年までパルマの弦楽器製作学校に通いましたが卒業証書を取得する前に辞め、同時期にパルマ大学で専攻していた哲学を優秀な成績で卒業しました。その後もアンドレアと彼の師匠であるレナート・スクロッラヴェッツァとの親密な関係は続き、思考、芸術、仕事に関連する多くの側面でレナートはアンドレアに深い影響を及ぼし続けることになります。2002年にアンドレア・ザンレは教員として弦楽器製作学校に戻り、レナート、エリーザと共に弦楽器製作の指導を始めます。またその一年前にレナート、エリーザと共に、パルマ弦楽器製作学校を卒業したプロの職人達から構成されるパルマ弦楽器製作者協会を創立し、協会はその時から様々なコースを管理する役割を担っていきます。積極的な活動の成果もあり、パルマ弦楽器製作者協会はエリーザとアンドレアのキャリアにとって重要な出発点にもなります。エリーザとアンドレアは協会の活動による最初の成功を受けて、2002年に弦楽器製作スタジオ・スクロッラヴェッツァ & ザンレを共同で設立することを決定します。2003年からアンドレアは音響、セットアップ、修理の分野の技術を身に付けるためアメリカに足を運び、Hans J. Nebelによるコースが開かれていたマサチューセッツカレッジ・オブ・リベラルアーツ大学とオバーリン音楽院のマスタークラスに熱心に参加し、また、そこでアメリカやヨーロッパの多くの弦楽器職人達と知り合っていきます。その後エリーザとアンドレアは同じ形式のマスタークラスをパルマ弦楽器製作学校に取り入れることに決め、Hans NebelGregg AlfGuy RabutSamuel Zygmuntowiczなどの有名な講師陣を毎年迎えました。

2000年代半ば、アンドレア・ザンレは、弦楽器製作活動と並行して歴史的な楽器の修復や複製楽器の製作を始め、その経験は彼の楽器のスタイルや音響が成熟していくための土台となっていきます。2006年、スクロッラベッツァ & ザンレはパルマの中心部(当初はファリーニ通り)に新しいアトリエを開設し、このアトリエはすぐに国内で最も重要な研究所の一つとしての地位を確立しました。ジョヴァンニ・バティスタ・グァダニーニの複製を専門とするエリーザとアンドレアは、ボストンのディーラーであり専門家のChristopher Reuningによるグァダニーニ生誕300周年を記念した展示会の開催の提案を歓迎しました。展示会は20119月にパルマ国立美術館で開催され、アンドレア・ザンレは美術史家のDavide Gasparottoと共同でキュレーターを務めました。当時のヴァイオリン製作の分野での大きな展示イベントの1つとして記憶されているこの展示会の委員会には、スクロッラヴェッツァ & ザンレとChristopher Reuning自身に加えて、専門家として名高いJames WarrenDuane RosengardEric Blot、ベア商会のSimon MorrisPhilip J. Kassなどが含まれています。展覧会のカタログ製作と並行し、スクロッラヴェッツァ & ザンレは、評論家達からの熱狂的な支持を集める製作家ジョヴァンニ・バティスタ・グァダニーニに関する重要な書籍(2012年出版)Philip J. Kassと写真家のJan Röhrmannの献身的な協力のもとに出版することを決定します。2013年、アンドレアはPhilip J. Kassと彼の友人であるPaolo Parmiggianiと共に、レナート・スクロッラヴェッツァ、フランチェスコ・ビソロッティ、ジャン・カルロ・グイッチャルディ、ジオ・バッタ・モラッシを主役とした、現代および1900年代の弦楽器製作の巨匠に関するドキュメンタリー(Violin Makers, The Renaissance of Italian Lutherie)の製作に専念しました。 2014年、アンドレアはJan Röhrmannとともに、"Treasures of Italian Violin Making"と題した新しい書籍のシリーズの基礎を築きます。このシリーズは素晴らしい保存状態の歴史的なイタリア弦楽器に焦点を当てており、長年にわたって高い評価を受けていきます。同時期にアンドレアは再びJan RöhrmannPhilip J. Kassと共にマントヴァ地方の作者に関する詳細な研究を行い、Philip J. Kassからアーカイブ研究の基礎を学び、歴史や楽器の様式への洞察を深めていきます。また、2014年以来、エリーザとアンドレアは、パルマ弦楽器製作学校の創設者、ガエタノ・ズガラボットを新しい研究の対象として心血を注いできました。この研究は彼に捧げられた書籍( "I Segreti di Sgarabotto"2019)の出版により実を結ぶことになります。アンドレアは、出版事業(近年は数十の記事が出版されています)に加えて、歴史的および科学的な分析、歴史的な楽器の研究と模倣をすることによる洞察や弦楽器の歴史についての知識の洗練、そして20世紀のエミリア地方とロンバルディア地方の伝統を受けた楽器製作に彼の情熱を捧げ熱心に取り組んでいます。複数の製作コンクールで受賞経歴があり、また陪審員の側としての参加も求めらる一方で、アンドレアは画一的ではない、歴史や地域の様々な伝統による特殊性と結びついた独自性のある弦楽器製作の理念を提唱しようと努めています。彼の師であるレナート・スクロッラヴェッツァが標準化されていく弦楽器製作の流れに反対してきたように。

レナートの死後、2019年にエリーザとアンドレアはパルマのトスキ通りに面したアトリエ(2009年にオープン)とレナートの暮らしていた邸宅を交互に訪れ活動の場としています。